
7月下旬、暑さにうなだれながら帰宅して、郵便ポストから取り出した封筒にはUSBメモリと可愛らしい自転車の形をしたクリップが。PCを開けると「欧州旅行に折りたたみ自転車を持っていきたい」と入念に準備を進め、ついに飛び立ったKさんからメールが来ていました。
ごぶさたしております。7/2に旅行から戻りました。旅行中「鈴木さんに」と撮っていた写真をまとめるのに時間がかかり、ご報告が遅くなりました。
写真が多すぎるので、郵送でUSBメモリに入れて別送します。ヨーロッパ自転車事情はネット上でいくらでも見ることができるので、珍しくないとは思いますが…
スイス~フランス~イタリアの順で回りました(USBに簡単な地図も入れました)。スイスとフランスは自転車用の標識も自転車道の整備も行き届いており写真も多いのですが、イタリアは…だったので、だんだん観光地めぐりのような内容に変化しているかもしれません。ご容赦ください。
結論から申しあげますと、自転車持っていって大満足です。やりたかったことは全部できたうえに、自転車があることで旅のスタイルや可能性がいつもとは全く違う方向へ広がったことも、大きな収穫でした。
という出だしで、充実した自転車旅行の写真と解説が几帳面に綴られていました。
いつかヨーロッパの街を自転車で巡ってみたい!と思っていた自分にとって非常に参考になる内容で、なによりその気持ちを強くしてくれるポジティブな旅行記です。
同じように、自転車を連れた旅をしたいけれどなんとなくハードルを感じているサイクリストの背中を押してくれるかもしれない。そう思いこのブログへの掲載許可をいただきました。Kさん、改めてありがとうございます。
写真が多いので、前後編に分けてご紹介します。スイスとフランスの様子から。でもその前に・・・今回の旅行で使っていただいた車両をご紹介しておきます。
(旅行記の公開は「TOLTの店や商品アピールをすること」という優しい条件をつけていただきましたので)
TERN の VERGE N8というモデルです。価格は¥115,500-(税込)。もちろん一般的な感覚で折り畳み自転車として高級車ですが、この手の走行性能を重視したスポーツ折りたたみの中では、作り込みの割に良心的な価格設定です。
Kさんの旅の相棒としてこれをおすすめしたのは、Ternは軽さやコンパクトさよりも、耐久性や安定感を重視しているから。日本よりも石畳や地道などの悪路が多いことが予想される欧州で、できるだけトラブルなく走り切りたい。折り畳み自転車はそもそも安定性では普通の自転車に比べて不利なのですが、それを最も感じにくいブランドだと思います。
ただし、Vergeのなかでも「N8」は初期のタイヤが少し細いので、パンクにも強い太めのタイヤに交換して納車しました。
そして、重要なオプションパーツが “Rapid Transit Rack”。長旅において荷台としての役割も重要ですが、折り畳んだ状態で車体を転がし移動できるようキャスターがついているのがポイント。特に非力な女性にとって、いくら軽量な折り畳み自転車でも空港や駅内でずっと抱えて移動するのは大変です。このラックにはご丁寧に畳んだまま押して転がせるようハンドルと専用カバーまで付属しています。折り畳み自転車の活用法まで作り込んでいるternの設計には感心します。
以下は旅から帰ったKさんからの嬉しいコメントです。
「もしかすると今回の旅行の「裏テーマ」は、57歳のママチャリおばちゃんの「妄想」を実現してくれた、
【スイス・フランス編】
2025.05.13 出発
関空~ドバイ~チューリッヒ(エミレーツ航空)
梱包には20分以上かかりましたが、有料ビニールラッピング(2000円)もでき、無事に預け荷物に出すことができました。窓口のスタッフは「自転車の受け入れは年に数回くらいなんですよ~」と歓迎してくれました。
2025.05.14~19
スイス・チューリッヒ近郊のHittnou
乗り継ぎでも自転車は迷子にならず、無事に目的地のスイス・チューリッヒに到着。出迎えてくれた友人のおかげで空港で段ボールを廃棄することもできて(ロープのみ保存)、友人宅までは1時間以上の電車とバスの移動がありましたが、早速ヨーロッパの快適な自転車社会を体験しました。基本、駅に改札が無いのがなにより楽です(地下鉄にはあります)
この友人宅に滞在中、彼女のモトリーノについて遠出したのですが、丘陵地を走るモトリーノのスピードに着いていくのは至難の業でした。また、みなさん普通に(おばあちゃんでも)車輪の大きな自転車かEバイクでスイスイ走っておられるので、ミニベロの私はかなり奇妙な印象だったでしょう。ただ、友人のモトリーノについて走ったおかげで、左右反対の道路やロータリー、交差点での作法(手信号を含む)などに早くなじめたと思います。その代わり、写真を撮る余裕はありませんでした。
2025.05.19~21
スイス・バーゼル
バーゼルはスイス、フランスとドイツの国境に位置します。ホテルから自転車で三ヶ国橋という、ドイツとフランスを隔てるライン川にかかった橋にスイスから行きました。ここは人と自転車専用の橋です。朝の20分ほどの間に国境を3回越えましたが、いうまでもなくノーチェックでした。
スイス側の「三国国境モニュメント」です。ここは交通の便が悪いので自転車必須でした。
目的地はDreiländerbrücke です(独仏語並記) 標識にさりげなく?ユーロヴェロも!
簡単にドイツに
通勤通学にも橋は使われている感じ
フランス側の河岸を南下していると、スイスに戻りました
治安がよい街だったので、自転車を街中に1~2時間駐輪することもできました。市中の自転車道もほぼきっちり分けられています。また、トラムが発達しているので、状況に応じてサイクリングの途中から自転車畳んでトラムを利用するなど、快適でした。また、スイス郊外の丘をいくつも越えるような遠出ではかなり苦戦しましたが、このような市街地ではternの本領発揮、という感じでいきいき走っていました。
バーゼル市内は自転車がとても活躍しています。自転車用信号、見えますか?
2025.05.21~31
フランス・アルザス地方のOsenbach
バーゼルから電車に1時間乗って、知人の住むアルザスの村へ移動しました。ここも山に近い場所だったので、なかなか苦労しましたが、1日は片道で15キロ程度、もう1日は「裏の山もサイクリングにいいよ」と言われて出かけました。
アルザスはワインの産地で、ちょうどブドウ畑の新緑シーズンでした。
ワインロードと並んでユーロヴェロの標識も。
これもユーロヴェロです。自転車マークがスイスと微妙に違います。
知人に勧められたサイクリング案。しっかり「山」です(笑)
休み休みしか登れない私をよそに、地元のサイクリストたちがどんどん通り過ぎます。
平地はほんのわずか。このあと石ころ道以上のオフロード?が。ternがんばりました!
アルザス滞在中、ストラスブールという大きな街へ電車で行きました。以下、その道中での写真です。
このまま自転車ごと電車にのる人。向かいのホームにはキックボードの人も。
前輪を引っ掛けるタイプの電車内自転車置き場
運悪くエレベーターが故障もしくは満員だとこのようにする人も。
駅のホームにはいつも自転車が何台も。
電車の乗り口がこのタイプだと苦労します。
自転車マークのある車両でも、自転車の方はたいてい行儀よく待ってから乗車します。
このスタイルでエレベーターに乗りこむ人は、一度しか見てません!
自転車用車両でなくても、混雑時でなければ普通に乗れます。
[おまけ]
アルザスの古民家を集めた民俗村の駐輪場で見つけたイラスト。
ハンドルはアルザス地方やドイツのパン屋さんのマークでもある
「ブレッツェル」の形、サドルはアルザスワインです。
2025.05.31~06.02
フランス東部のブザンソン
アルザスから長距離バスで170kmほど西南にあるブザンソンという街に移動。
午前中、有名な要塞を見学していたら眼下によさそうなサイクリングルートを発見。いったんホテルに戻り、午後から自転車で出直しました。
左端中央あたりの要塞の城壁(見学者も見えますか?)と下界。
下界でサイクリングスタート。
上方に要塞が見えています。橋を進むとトンネルが…
地図中の赤い風船みたいなマーク内に「あなたは今ここ」とあり、周囲にユーロヴェロ6もあることがわかります。
徒歩と自転車用トンネルは長くて暗く、他の歩行者がいなければ昼でも通行をためらうほど。
車道とは別にずっと走ることができます。
宿の朝の食堂でもこんなシニアサイクリストのグループを見かけました。
2025.06.02
ブザンソン滞在中に電車で30分ほどのDole(ドル)という町に自転車と共に。畳まずにそのまま乗車。
また後の写真にもありますが、幅広のゴムバンドで自転車を固定する仕組み。
Dole(ドル)はツールドフランスのコースにある町なのですね?
日本ではThe Laughing Cowの名で売られているフランスの6P(実は8P)チーズもツールドフランスバージョンに模様替えして店頭に。
私の注目ポイントは
・商品名の「笑う牝牛」が「笑うフランス」に書き換えられている
・コース上の町や村のイラストでパッケージが何種類もある
フランス国民にとっての同レースの重要さが現れています!
Doleでは自転車用の標識もこんなに立派。
運河の発達した町で、運河沿いにユーロヴェロが伸びています。もちろんサイクリストもたくさんいました。
今回の旅行で一度きり出合ったtern。残念ながら声をかけてませんが、旅行者のようでした。
ユーロヴェロから外れて遠くへ向かっていったサイクリスト(見えるように画像を大きめにしてあります)ずっと平地なので、私もどこまでも行きたい気持ちになりました。
運河を通行する船は「閘門(こうもん)」という仕組みで行き来します。他のサイクリストたちと橋の上から20分以上(水を堰き止めてためて…を繰り返すので時間がかかる)見物。最後の写真の橋の上には、撮影に夢中の私に放置されたternが。実際、そんな平和な雰囲気だったんです。
Doleの町からの帰路の駅ホームに上がるエレベーターは無く、代わりに階段端にこのようなレール?が。無いよりはまし、という感じ。
帰りの電車はフランス版新幹線TGVの各駅停車(運賃は在来線と同じ)。車体は泥だらけのうえに、運転手はおもいきり私服でした。自転車マークのある車両ですが、スーツケースに占領されていました。説明書にあるようにシートベルト的なベルトを引き出して自転車を固定する方式なのですが、それも届かないので、引き出したベルトを自転車にくくりつけました。
2025.06.02~04
ロン・ル・ソニエ
フランスとスイスを隔てるジュラ山脈沿いに電車で南下。「ジュラ紀」のジュラなので、山肌はどこも縞々。
在来線でよく見るこのひっかけるタイプをいちど試したのですが、ternでは全長が足りずに下が固定されず断念。
2025.06.04~05
エクス・レバン~シャンベリ
イタリアへのアルプス越えバスの出ている町(シャンベリ)の近くへ南下を続けます。
黒い幅広ゴムで留める方式。最初は先客に遠慮して近くに立っていましたが、疲れたので強引にゴムを引っ張って私のternのサドル下にも通し、安心して座席に。
前の画像の自転車置き場の上に貼られた注意書き。自転車の種類の多さに注目してください。スイスもそうでしたが、フランスにも多用な車種?があり、生活の中で活用されています。
乗り継ぎで降りた本当に小さな駅なのですが、駅前駐輪場にはこんなかっこいい空気入れが!(ちなみに旅行中、街角で空気入れを見ることはほぼありませんでした)
電車内で見かけたヤマハのEバイク。フランスでは350~400ユーロします。日本でも30万以上するようなので、妥当な価格かなあ、とは思うのですが、持ち主の青年は在来線の中で弁当箱を開けるような素朴な感じ。
エクス・レバンは湖畔の温泉保養地です。大きな湖で海のようでした。車窓からの一枚には窓ガラスの自転車マークが。2-55の奥に見えている雪山を越えたらイタリアです。
湖畔のサイクリングロードに、自治体が用意しているらしい自転車用の水素チャージャーがありました。「水素電池自転車用」ですか?
市内道路における自転車道の整備は、この町が行き届いており、交通量も少ないのでよい練習になりました。路面を良く見ると、ロータリーを車と一緒に回るように指示されていることがわかると思います。自動車と並走しながら手信号で自分の行きたい方向までロータリーを回ります。
道路の状況に応じて、時にはこんなトリック?もあります。直進したい場合はそのまま、左側に渡りたい場合は側道に入ってから自転車用の白線に沿って横断。一瞬迷いました(失敗したときは自転車を降りて歩行者と一緒に横断歩道を渡ることも)
いよいよイタリア
へ向けて長距離バスでアルプスを越えます。所要時間は約3時間。この車窓からの眺めが、シャンベリからイタリアへ入るルートを選んだ理由です。
[イタリア編へ続く]