2021.6.23 / クロモリロードバイクのメリット、デメリット。どんな人に合うのか?

ロードバイクのフレーム素材に「クロモリ(鉄にクロームとモリブデンを配合した合金)」があります。レースの世界で主流になっているのはカーボンやアルミ。でもそれは勝つための選択であって、趣味で乗るロードバイクとしてTOLTではクロモリフレームをお勧めすることが多いです。お客さんからも良く尋ねられることなので、クロモリの特徴、メリットとデメリットについて書いてみようと思います。

本当はクロモリでもカーボンでもアルミでも、モデルごとに乗り味は違います。でもあくまで平均的な特性として、そして僕は理系人間ではないので乗った時の感覚で推測を交えての説明です。


良い点は4つ。

①反力を感じる走り。プラスの加速。
②長時間でも脚の疲労が少ない。
③頑丈
④細身で綺麗

 

逆に、欠点と言われているのは2つですね。
①重い
②錆びる

 

そして、どんな人にクロモリフレームが合うのか?

ここからちょっと長文ですが、ひとつずつ解説しますね。


①反力を感じる走り。プラスの加速。

クロモリのパイプはアルミやカーボンに比べて “しなり” が大きいです。自転車のフレームは三角形を組み合わせた丈夫な形をしていますが、人間の体重とパワーでグッとペダルを踏めば動きます。動いたフレームは元の形に戻ろうとします。その反発力を使ってまた踏み込む。そんな効率的な踏み方ができると、身体の延長として自転車を感じることができ、とても爽快です。

この感覚は決してマニアックなベテランだけのものじゃありません。初めたばかりのビギナーでも十分感じることのできる特性です。

カーボンロードバイクに乗っている人が初めてクロモリに乗った時、そのグンッと加速するフィーリングに驚きます。乾いた加速ではないけれど、一瞬沈んでスルッと前に進む。それは、踏み込む力ににプラスαでパワーが加わるような伸びやかな加速です。

 

マラソン界では少し前にNIKEの厚底ランニングシューズ(名前は確か〇〇フライネクスト%)が話題になりました。それまで玄人が履くランニングシューズと言えば薄底が当たり前だった常識を覆し、レースで新記録を次々と更新していました。

反発力を使って加速。バネが効くような走りでどんどん前に進む革新的なシューズが、実は自転車界で一番古いクロモリフレームと似たような感覚なんじゃないか。そう考えると面白いですよね。ロードバイクの世界でも硬いフレームが加速が良いイメージがありますが、その常識が覆されないとも限らないのでは?

そして、厚底シューズは疲労も軽減するようで・・・


②長時間乗っても脚の疲労が少ない

よく使われる「振動吸収性」という言葉は路面からの微振動が、フレーム内部でどれほど減衰していくかを指していると思うのですが、これは数値で見るとクロモリよりカーボンの方が若干優位だったはず。でも振動吸収性については、経験的にはタイヤやホイール、サドルなどのパーツの影響の方が遥かに大きい気がします。特にタイヤの太さやしなやかさは、フレーム材料の性質云々を簡単に覆してしまうほど違います。

クロモリが疲れないと言われる所以は、やはり“しなり”にあると思われます。アルミやカーボンがペダルを踏んだ瞬間に素早く動力が伝わるのに対し、クロモリはワンテンポ遅いような感覚です。例えば芝生の上でランニングとアスファルトの上で走った場合、瞬間的なスピードはアスファルトの方が上でしょうが、怪我せず走り続けられるのは芝生です。

テニスをする人なら、芝のコートとハードコートでは脚への負担がかなり違うのも感じているはず。プロの試合でよく使われるハードコートはスピードがあって見ていて楽しいですが、普通の人が趣味でやるなら人工芝の方が穏やかで楽しいのでは?それと同じで、プロ選手が必要とする自転車と、ホビーライダーに相応しい自転車が違うのは自然です。


③頑丈

一部の肉薄パイプを除けば、クロモリフレームは転倒してもフレームが破損して乗れなくなることはほとんどありません。アルミフレームも元々それほど弱くありませんが、近年の超軽量アルミロードはかなり薄いので、打ちどころによっては簡単に破損します。カーボンは通常使用時の耐久年数は以前よりかなり高くなっていますが、点で受ける衝撃には弱くやはり扱いはデリケートです。

 

ここで「メーカー保証」についてもちょっと触れておこうと思います。フレーム材質にかかわらずほとんどのメーカーが最低でも一年、長い場合は生涯保証をつけています。

当然ですがこれは「通常使用」が条件で、転倒時には適応されません。でも自転車ってちょっと特殊な製品です。メーカーからすればコケたときの保証までできないのは分かります。一方で、自転車に乗っていたら多少はコケることもあるし、倒したりぶつけたりするくらいの可能性はもっとあります。

だから、保証があるから安心か?といえば「いいえ」。制度的な保証より、純粋な製品としての頑丈さが結局大事になってきます。プロのロードレーサーにとって自転車は勝つための道具ですが、多くのホビーライダーにとってそれは宝物。ダメになったからと言って簡単に新しいものを買えるわけでもありません。

保証制度や理論上の耐用年数ではなく、本当の意味で使ってタフなクロモリフレームは安心です。


④細身で綺麗

見た目の話で、もっと言えば好みの話です。でも、自転車の構造美と均整のとれた清々しさを最も感じさせてくれるフレームはクロモリだと思います。

その機能美を崩さない範囲で、パイプの接合部分には美しく見せるため(だけでなく機能的な意味もありますが)の技巧もあります。装飾的なラグを使ったものや、すっきりと見せるためのフレーム内部でのロウ付。滑らかに粘土細工のように仕上げるフィレット加工も。

マニアックになる必要は全然ないですが、パッと見で細身のシルエットが美しいと思うなら、クロモリを選ぶ十分な理由になると思います。


ここから2つは欠点について。

①重い

クロモリフレームの代表的なイメージかもしれませんね。でも完成車として見た場合、めちゃくちゃ重いわけじゃありません。

フレーム重量で比較するとクロモリは1800~2000gくらい。対して高級なカーボンは1000gを切るものも多く、ザッと1000gくらい差があります。因みにアルミは1300~1400gくらいが多いでしょうか。

1ooogの差となると、元々10kg以下しかないロードバイクでは10%も軽量と言うことになるので、レーサーにとっては大きな差です。でもそうでない人にとって、完成車で8kg前後なら十分軽さを楽しめるロードバイクだと思いませんか?

軽量ホイールやコンポーネントで組んだクロモリ完成車なら7kg台のものも珍しくありません。ただ、軽いパーツは価格が高いので、総合的に見ればおそらくカーボンフレームの方がより少ない予算で軽い完成車を作ることはできると思います。

でも、クロモリフレームだからといって“軽さ”を諦めないといけないかと言えば、そんなことはない。クロモリがレースで使用されていた頃は、コンポーネントもホイールも重い時代。だから余計にクロモリロードは重いという印象がありますが、現代のコンポーネントなら6kg台さえ可能です。

確かにカーボンより重い。でも完成車にした時に困るほど重くはない。峠道が好きなサイクリストにもクロモリ愛用者は多いです。“しなり”を使ってリズミカルに登るのも、とても楽しいです。


②錆びる

錆びて乗れなくなることを心配されている方も多いですね。

でもこれはむしろ逆で、乗らなくなった(あまり大事にされていない)クロモリフレームが錆びているように思います・・・

ロードバイクは室内保管している人が多く、それであればクロモリフレームでもそうやすやすと錆びません。薄い錆が回ったとしても、乗れなくなってしまうほど痛むことはまずありません。サイクリング中に雨に打たれるくらいも全然平気です。

木津川サイクリングロードで走っているベテランライダーの多くは、何十年も乗っているクロモリフレームです。

できれば最初にフレーム内部に防錆処理をした方がベターですが、それ以外の取り扱いで神経質になる必要はありません。普通に乗って、雨で濡れた時はサラッと拭きあげて、時々自転車屋さんでメンテナンス。それでまず20年は乗れます。それどころか、例えばクロモリフレームメーカーのRivendell Bicycle Worksは、40年乗ることを想定しています。

一切錆びないことはないですが、少なくともカーボンやアルミより永く乗れるのは間違いないでしょう。チタンやステンレスフレームには及ばないかもしれませんが・・・


どんな人がクロモリフレームに合うのか?

疲れずに遠くまで行きたい。
通勤でタフに使いたい。
一生ものの一台として、永く愛用したい。
というのが、よく言われるクロモリに合う人。

 

これは間違いない。でも・・・

 

僕が特に強調して伝えたいのは、
クロモリがスポーツとしての運動性能で劣るわけでは無いと言う事。カーボンやアルミに比べてスピードが出ない、登れない。爽快な走りができないんじゃないか?それは完全に誤解です。「最新」が圧倒的に優れているように見せるためのメーカーの販売戦略も大いに影響していると思いますね。
確かに、プロ選手に必要な一瞬の爆発力に限って言えばカーボンに及びません。でも、伸びやかな加速、ぐんぐんバネのように登る登坂性能、脚の疲労を抑える独特の“しなり”は、スポーツ機材としてとても優秀です。懐古主義や見た目の好みではなく、性能を評価してクロモリを選ぶのも全く自然なことです。

 

ホビーライダーの多くにフィットする素材だと思うので、逆に“合わない人”を挙げるほうが簡単です。

・瞬発力を必要とするレース、極限の軽さが求められるヒルクライムレースで勝ちたい。(長距離でスタミナがものを言う市民レースなら、クロモリもあり。)

・プロレースや『弱虫ペダル』に憧れていて、選手と同じものに乗りたい。

このどちらかに当てはまるなら、クロモリは合わないでしょう。カーボンが無難だと思いますね。


あと大事な価格についてですが、一部の工芸的で希少価値のあるモデルを除いて、

完成車のエントリーモデルが10万円程〜。ミドルクラスが20〜30万円。高いもので50万円くらいまででしょうか。相場としてはアルミフレームとほぼ同価格帯か若干高いくらい、カーボンより安いです。

レースを王道として発展してきたスポーツ自転車業界なので、カーボンやアルミロードバイクを主流にしているメーカーが多いです。でも、自分の乗り方が競技志向とは違うなら、「古いフレーム素材」と先入観を持たずに、クロモリロードバイクは絶対に選択肢に加えておきましょう!

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